森を抜けて駆けていく

クラシックの話、時々アウトドアの話。

 八ヶ岳山麓スーパートレイル④ 1日目 8/3(霧ヶ峰キャンプ場~白林台キャンプ場) Part2

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gambitqueen.hatenablog.com

 

前回に引き続き、霧ヶ峰から蓼科湖を歩いた1日目。白樺湖から八子ヶ峰を超えて蓼科湖にくだります。

 

白樺湖から登り道が始まる場所にある、スーパートレイルの案内看板(写真右下)

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白樺湖から少し登ったところにある「銭岩」

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以下、看板の説明文
<伝説>
 白樺湖の南岸、湖岸よりおよそ100mほど山にのぼったところに、銭岩がある。白樺湖がまだ造られなかった頃のことである。(湖は温水溜池として昭和二十年度完成)
 地元のある人が、炭焼きをしようとして、穴を掘った。すると土の中から、穴あき銭がたくさん出てきた。銭は宋銭でかますに二つもあったそうである。付近を信玄の棒道が通っていることから、信玄の軍用金のかくし場所がこの周辺にあったのではないかとの伝承がある。



……白樺湖って人工湖かよ!
って割とげんなりしてしまいました。
まぁ「本物の自然」っていうのは人間には不都合な場所で、「自然」に感動していても、そこから見える景色に1mmも人間が介入していないなんて場所は日本にはあまりないだろうけれど。
継続的な管理のもとに成り立っている霧ヶ峰の草原風景や造られた白樺湖

その人工的自然にまんまと感動している。

1993年生まれの日本人なんてそんなもんだろう。か。。

ちなみに「信玄の棒道」は2日後にひたすら歩くことになります。

岩しかないので(お金は残念ながら落ちていない笑)、ちょっと見てまた登り始める。


歩き始めてすぐにすれ違ったおじさんに「どこまで行くの?」と聞かれたので「山を越えて蓼科湖まで行きます」と言ったら、相当驚いていた。その人は車で銭岩を見に来ていたようだったし、異質な人間に映ったかな。

この銭岩のあたりは軽井沢さながらの別荘地になっていて、車が停まっていたりいなかったり。企業の避暑施設もあったりする。

そのまま登っていくとスキー場に出た。

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実はこの時点で、手元の地図とはルートが異なっていたのだが、どうにかリカバリーできそうだったので、無視していた。

別荘地なので山の中なのに道が張り巡らされていて迷ってしまったようだった。

途中とんぼと戯れる。

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このスキー場では一番上にあるリフト沿いを登って行く。これがとんでもない急坂。登りながら、「え、これルート外れてるかな」と何度も思ったけれど、何度地図を見ても合っている。かなり疑心暗着の心持ちでぜいぜい言わせながら登っていった。(ちなみに帰って来てから冷静に確認しましたが、ここはルート通りで合っていました)

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登りきってまた眼下に白樺湖。そしてその向こうには何時間か前にいた霧ヶ峰の山があります。


ここで事件が起きました。
いくべきルートの真逆方向にむかって尾根を歩いていってしまったのです。

途中で道らしきものが終わっても、思い込みというのは恐ろしいもので、合っていると強く信じているせいで、藪漕ぎしてでも前に進んで行きます。
目の前には今日明日歩くことになるだろう茅野市周辺の山麓風景が広がっています。

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……でも、緩やかな尾根が終わり、崖に囲まれてしまいました。
あれ?
……間違ってる?
よし、冷静に深呼吸。落ち着いて地図を見よう。

「」「ゔ」「逆来とるやないか~い!!」
本当に声に出して言いました。

冷静にと自分を言い聞かせていましたが、引き返している間、そうとう焦っていました。
疲れと焦燥で心臓の音が身体中に響いているような感じでした。
時間的には20~30分くらいのロスなので、致命的ではないのですが、一つ大きな懸案事項がありました。
目の前に雷雲が広がり始めていたのです。

昨日霧ヶ峰に到着してからというもの、気象が全く安定していなかったから、黒めの雲があること自体は驚かなかったのですが、なにしろ尾根。鳴り始めたらどうしよう。どうしよう。あぁツェルトの一つでも忍ばせておけばなぁ…と色々と考えながら歩き続けました。

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本ルートに合流し、ひたすら歩き続けます。
向かって左側にさっきとは別のスキー場を見ながら歩いて行きます。

雨は降ってこないけれど、ここに来て水を一滴も持っていないというシチュエーションが僕を半ばパニック状態にさせていました。

どれほどパニックだったかというと、スキー場(夏なのでもちろん閉鎖中)の人工雪を降らせるための装置のじゃぐちをひねって水をだそうと何回も試したくらいでした。

サン=テグジュペリの小説「人間の土地」で、サハラ砂漠に墜落して、幻覚を見ながらひたすらに水を求めている主人公さながらの状態でした。

バックパックが重く肩にのしかかり、喉が渇いているわけではないけれど、渇いても飲むものがないという恐怖。あとどのくらい歩けばコース上に沢なり水が確保できる場所があるのかわからない恐怖。
不注意によって、山の上でこんな思いをしなくてはいけないとは……という深い深い後悔。

気を紛らわせようと、iphoneを取り出して松任谷由実のアルバムを再生したりしたけれど、全然解決しない。
とにかく歩こう。とにかく歩こう。

少しでも登りになると、がくんとペースが落ちるような状態で、気持ち的に限界に来ていました。

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半分折れそうな気持ちの中で、八子ヶ峰の山小屋・ヒュッテアルビレオに到着。
管理人もいる……けど、水を売っていない。半分閉鎖していました。
割と困ってるオーラ出したんだけれど、管理人のじじいは女性ハイカーとのトークに夢中。
ほんとに死ねよこのエロオヤジって呪うほどに憎悪感が湧きましたが、しょうがないと諦め、旅日記に手を取りました。



ーーー旅日記ーーーーーーーー
12:10 八子ヶ峰
11:10ごろ真逆にいくという失敗し、時間をロス。水がつきてしまって困っている。やはり1.5Lの方にも入れておけばよかった。稜線づたいで水場がない。困った。蓼科湖まではあと1.5hらしい。すこしかかとが痛い。コーラでも飲みたい。
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目的地の蓼科湖までの所要時間がわかったことで少し勇気が湧きました。

あと、ここからは下りだけということも精神的にプラスになりました。

またとんぼ。

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森林は大変にきれいなんだけれど、体力の限界すぎて、全然歩けなくなっていた。休憩を超頻繁に取りながら、気持ちだけで前に進んでいました。高校球児かよって感じですね。

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随分と降りてきて……念願の沢!!
バックパックを放り投げ、身一つで沢に両手を入れて口に流し入れる。何杯も何杯も。
うまい!水っておいしい!

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水筒にも水をしっかり入れて、また出発。

……全然ペースが違う笑。快調なペース。
水分補給って大切ですね。。当たり前だけれど、いい勉強になりました。

精神的にも肉体的にもすんなり回復し、蓼科湖に到着。

八子ヶ峰から2時間弱。少し予定より時間がかかったけれど、とりあえずゴール。
俗化の極みといえる蓼科湖周辺、とりあえず休もうと、ようわからん小さな遊園地脇の湖畔のベンチに座って、念願中の念願、コカコーラを飲みました。周りにはたくさん子供連れの観光客がいて、場違い感がはんぱなかったけれど、空気を読むほど元気ではない。夏の高原のやわらかい日差しを久々に優しいと感じながら旅日記。


ーーー旅日記ーーーーーーーー
14:10 蓼科湖
14時ちょっと前に蓼科湖に到着。下山が長く途中足の裏の皮がむけてしまい、嫌でわからんかった。蓼科湖はとっても俗化していて、逆におちついてしまう俗化している。コーラがおいしい。下山がつらかった。天気はとんとんでくもっている。肩と足ががくがくである。テントはったらすこしねるか、温泉にでもはいりたい
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こう書き起こしてみると、なんちゅう日本語だよって感じですが、そのまま載せておきます。


ーーー旅日記ーーーーーーーー
16:00 白林台キャンプ場
15:00到着。客は僕一人。温泉のことを管理人に聞いたら「石遊の湯」というのが徒歩10分にあるときいたら、第一水曜日が休みという。って今日じゃん。……と、もう少し調べてみたら8月は無休らしい。よし!テントを設営して、ギアを全部芝生に敷いて乾かした。そしたら15分くらいあとから雷雨。雷はそんなに鳴らなかったが、16:30現在でも降っている。お風呂は20:00までなので止んだら行こう!雨のおかげでだいぶ気温が下がってきた。
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ギアを並べて乾かしている様子。
こまめに乾燥させないと重くなってしょうがない。

この15分後に土砂降りだなんて誰も予想しないですよね。靴下は水道で洗って干していたため、結局全く乾きませんでした。

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他に人がいないと、なんでも好きにできますよね。気楽気楽。

ーーー旅日記ーーーーーーーー
20:06 白林台キャンプ場
石遊の湯は思いの外よかった。だけど日の入りの時間もあるので、すごくゆっくりはできなかった。夕食後コーラを買いにいくついでに蓼科湖を一周。あまり大きくない。雷がきそうでなかなかこない。でも諏訪湖のあたりや美ヶ原の方は落ちているので、来ても不思議でない。今日もSBCラジオで巨人vs中日を聴いている。ここら辺はよく飛行機が通るようで、それは雷の音に似ていて、最初どっちかがわからない。明日の地図を確認。
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石遊の湯

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他のお客さんは慣れた感じに見えたので、地元の人だったようです。
小さなレストランも隣にあって、いい感じでした。
もともとどこかの企業の持ちもので、今はこのように温泉を提供しているそうです。森の中で静かで落ち着きました。
1日の疲れもすっかり取れました。



ということで色々あったトレイル初日が終了。
かなり長くなってしまいました。
懲りずに読んでくださっている方がいれば、大変ありがたいです。